- トップ
- ブログ
ブログ
相続税の申告期限について
今回は、相続税申告の期限についてお話ししようと思います。
相続税申告の期限は「相続の開始を知った時から10ヶ月以内」とされています。
この「相続の開始を知った時」と書かれていることからもわかる通り、例えば被相続人が1月1日に死亡した場合に、実際に相続人が死亡の事実を知ったのが3月1日だったという場合には、3月1日から10ヶ月後の次の年の1月1日が申告期限となります。
このように、相続税申告の申告期限は規定されていますが、実際のところ、期限を知った日というのは証明が難しく、どのように運用されているのでしょうか。
この点について、例えば税理士が補足の説明資料を作成する方法であったり、孤独死などの場合には、戸籍謄本に記載されている、死亡届の提出日などから証明していくことになります。
他にも、他の相続人からの連絡の場合には、その到着日を簡易書留で証明してもらい、根拠にする場合も考えられます。
ここで、税理士の補足資料は作り放題じゃないかという疑問がありますが、この補足資料もなんらかの根拠に基づいて作成しますので注意が必要です。
今回は、相続税の申告期限についてお話ししました。
次回以降も宜しくお願いいたします。
養子縁組と相続税の基礎控除額の計算方法
今回は、「養子縁組と相続税の基礎控除額の計算方法」について解説していきたいと思います。
1 原則
相続税の基礎控除の計算方法は、「3000万円+(600万円×法定相続人の人数)」によって求めることができます。
この時、養子であっても法定相続人であることには変わりないので、「法定相続人」の人数に含めて計算することができます。
2 例外
⑴ ただし、無制限に養子を法定相続人に含めて良いとすると、相続税がかからないくらいまで養子縁組を行う人が出かねないため、相続税法15条2項では以下のくくりにしたがって人数制限を設けています。
①当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、養子の数が一人である場合 一人
②当該被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合 二人
このように、相続税の基礎控除を計算する場合には、養子の人数に注意する必要があります。
⑵ もっとも、例外の例外として、無制限に人数に含むことが認められるのが配偶者の実子を養子にした場合(いわゆる「連れ子養子」)です。
配偶者の連れ子を養子にした場合には、「実子とみなす」(相続税法15条3項)とされているため、養子の人数制限にかからないことになります。
3 裁判例
⑴ 問題点
では、連れ子を養子にした場合には、人数制限にかからないとして、以下のような事情があった場合、基礎控除額はどのように計算するのでしょうか。
① 配偶者が死亡した後に連れ子を養子にした場合は、実子として基礎控除額を計算するのか。
② 連れ子の養子が被相続人より先に死亡していた場合、実子として扱う以上、養子縁組前に生まれた孫にも代襲相続が発生するのではないか。
⑵ この点について、東京地裁平成25年5月30日は、以下のように判断しました。
①については、相続税法15条3項が単に「配偶者の実子」としていることからすれば、姻族関係終了届を提出していない限り、実子として差し支えないとしました。
②については、民法727条が養親及びその血族と養子の間に親族関係を作出し、養親と養子及びその血族との間に親族関係を作出することを規定していないことからすると、養子縁組まえの孫との関係で代襲相続は発生しないと判断しました。15条3項はあくまでも、計算上の取り扱いと考えているのだと思われます。
このように、基礎控除の計算と養子縁組には注意すべき部分がありますので、気を付けましょう。
相続税の債務控除と特殊清掃費用について
皆様、お久しぶりです。
弁護士兼税理士の林です。
本日は、相続税申告において「特殊清掃費用が債務控除できるのか」という点について、検討していきたいと思います。
1 債務控除について
相続税の債務控除は、「被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務(借入金や未払金など)で確実と認められるものです。」とされています(相続税法基本通達14-1)(参照サイト)。
なお、債務の金額が確定していなくても当該債務の存在が確実と認められるものについては、相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額だけを控除するものとするとされています(昭57直資2-177改正)。
2 特殊清掃費用との関係について
他方、特殊清掃費用は、被相続人の死亡後、長期間に渡り発見されなかったことで、部屋を汚損、破損してしまう事で発生する費用です。
この時、特殊清掃費用は、被相続人の死亡後に発生した費用であるため、「現に存在した被相続人の債務」とは言えないのが原則となります。
また、被相続人が賃貸借契約を締結した際に、原状回復義務を負っていた場合であって、「債務の金額が確定していない」場合に当たるとしても、「相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額だけ」が対象となるので、相続開始当時の現況はまだ死体が液状化しておらず綺麗な状態の部屋と考えられるので、この場合にも当たらないと考えられます。
これらの点から、実際上、特殊清掃費用は原則として債務控除できないと考えることが妥当といえます。
3 例外的な場合
もっとも、例外的に特殊清掃費用であっても債務控除できる場合があるとすれば、賃貸借契約書や入居契約書にその旨が明記されている場合が考えられます。
これらの書面に、契約当初からその旨が記載されていれば、抽象的にではあるものの、債務は確実に存在していたといえるため、「現に存在していた被相続人の債務」であると明確にいえます。
また、その支払いは確実に発生するので、その点でも「確実に認められるもの」といえると思います。
ただ、「相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額」という点を満たしているかという点については、疑問点が残りますので、契約書に明記されている場合でも確実に認められるかは微妙なところだと考えます。
以上、今回は、特殊清掃費用と債務控除について検討させていただきました。
次回もよろしくお願いいたします。
家族信託の作成に必要な費用について
皆様、お久しぶりです。
肌寒い季節になってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
本日は、「家族信託の作成に必要な費用について」をテーマにしていきたいと思います。
1 まず、家族信託の作成に必要な費用としては、以下のようなものがあります。
① 公正証書作成手数料
② 登録免許税
③ 郵送料等の実費
④ 家族信託組成のコンサルティング費用
⑤ 公正証書作成手数料
⑥ 信託登記代理手数料
以下、個別にみていきますが、おおよそ全体としては50万円~100万円程度の金額がかかってきます。
2 ① 公正証書作成手数料
家族信託契約書は、その内容が第三者の確認のもと、正式に作成されたものであることを証明するため、公正証書にする場合が多いです。
そのため、公証人に対する公正証書作成手数料が発生します。
公正証書作成手数料は以下のとおりです。
目的の価額手数料
50万円以下 3000円
50万円を超え100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 13000円
500万円を超え1000万円以下 20000円
1000万円を超え3000万円以下 26000円
3000万円を超え5000万円以下 33000円
5000万円を超え1億円以下 49000円
参考サイト:公証人連合会HP
3 ② 登録免許税
信託財産に不動産が存在する場合には、信託財産である旨の登記を行う必要があります。
その際、登録免許税と呼ばれる、登記を行うことで発生する税金を支払う必要があります。
登録免許税の計算は以下のとおりです。
登録免許税=固定資産税評価額×0.3~0.4%
4 ③ 郵送料等の実費
登記申請や連絡のための郵送料が5000円~1万円程かかります。
5 ④ 家族信託組成のコンサルティング費用
家族信託は複雑な信託法に基づいて組成されます。
この信託法に反しない範囲で、家族信託の目的を十分に達成するためには、専門家によるアドバイスが不可欠となります。
この専門家のコンサルティング料の相場は信託財産総額に1.1%を乗じて得た金額(最低33万円)程度であることが多いです。
6 ⑤ 公正証書作成手数料
公正証書を作成する場合、専門家と公証役場との間で調整を行う必要があります。
また、公正証書にする内容の原案については、専門家が作成する必要があります。
この手数料相場は、約11万円です。
7 ⑥ 信託登記代理手数料
また、家族信託の登記申請は、複雑なため、この申請に際しても専門家の代行手数料がかかる場合が多いです。
相場としては、11万円であることが多いです。
これらの手数料を合計していくと、家族信託の作成手数料はおおむね50万円から100万円程度になることが多いといえます。
では、また次回お会いしましょう。
家族信託の契約内容の変更方法について
皆様、お久しぶりです。
弁護士法人心の林です。
今回は、「家族信託の契約内容の変更」について、お話していこうかと思います。
1 想定場面
一度成立した家族信託であっても、後で信託財産の追加を行いたい場合や、不動産の売却についての権限も受託者に委託したい場合等があります。
このような場合に、家族信託の契約内容の変更を行う必要があり、このような手続きをどのように行うのかという疑問があります。
今回は、この点について、検討していきたいと思います。
2 原則
家族信託の内容の変更は原則として、「委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。」とされています(信託法149条1項)。
通常、家族信託が委託者及び受託者間の契約であることから、両者の同意のみがあれば受益者の合意は無くても良いのではないかとも思えますが、信託契約が受益者のための契約であることから受益者の同意も必要とされている点がポイントとなります。
3 例外
しかし、信託法では、以下のような事情がある場合には、例外的にな規定を設けております。(信託法149条2項、3項各号)
⑴ 信託の目的に反しないことが明らかである時は、受託者及び受益者の合意のみで変更ができる。
→委託者の同意は不要。
⑵ 信託の目的に反しない事及び受益者の利益に適合することが明らかである時は、受託者の書面による意思表示のみで変更ができる。
→委託者及び受託者の同意は不要。
⑶ 受託者の利益を害しないことが明らかである時は、委託者及び受益者の受託者に対する意思表示のみによってすることができる。
→受託者の同意は不要。
⑷ 信託の目的に反しないこと及び受託者の利益を害しないことが明らかである時は、受益者から委託者に対する意思表示のみによってすることができる。
→委託者及び受託者の同意は不要。
4 当事者間で意見の相違がある場合と変更の可否
上述のとおり、2項及び3項の規定では、例外的に他の当事者の関与なく信託の内容を変更することができるというものですが、基本的な趣旨は「全員の同意がないと変更できないとすると見合わない時間や費用を要することがあり得ることから柔軟な変更を可能にする」点にあるため、当事者間で意見が割れた際に誰の意見を優先するかという問題点との関係では、同項の規定を使用できないのではないかという疑問があるところではあります。
この点については、判例の集積等もないため、今後の課題かと思います。
個人的には、「受託者の利益を害しないことが明らかである時」というのが、例えば「後に信託財産から保証を受けられるか否かに疑義が生じる事となる等、法的に不安定な事態を招来する可能性がある」(信託法改正要綱試案 補足説明144頁)ことに配慮した要件であることを前提とすると、信託財産の構成を変更するような変更でなければ、⑶又は⑷の規定により変更できるのではないかと思います。
以上です。
次回も家族信託に関しての記事を書く予定です。
それではまた。
家族信託の概要について
皆様、お久しぶりです。
弁護士法人心の林です。
本日は、家族信託の概要について解説していきたいと思います。
家族信託とは、委託者の財産を受託者が管理できるようにすることで、その財産から発生した利益を受益者に還元できるようにする制度を指します。
この家族信託は委託者が認知症になってしまった場合等を想定して事前に財産の管理ができるようにする点に特徴があります。
この家族信託は終了した際に、契約時に定めた権利帰属者に帰属します。
そして、この家族信託が終了するルールとして「委託者兼受益者」が死亡した場合と定められる事が多く、相続と同時に家族信託の権利帰属が発生するという場合が多いです。
そして、家族信託は上述のとおり、権利帰属者に帰属するため、民法の法定相続とは異なるルールで権利の承継が行われていきます。
そのため、家族信託の対象財産は原則として遺産に含まれません。
このような取り扱いと遺留分との関係性については議論されているところですが、後日まとめた記事を書きたいと考えています。
このように、家族信託は認知症対策等で行われることが多く、その出口は権利帰属者になるという点について解説しました。
次回も、家族信託をテーマに解説していきます。
それでは、また次回お会いしましょう。
相続開始後の出金と遺産分割の対象について
皆様、お久しぶりです。弁護士の林です。
最近は暑い日が続いておりますが、体調はいかがでしょうか。
今回は、「相続開始後の出金と遺産分割の対象」についてお話していきたいと思います。
1 想定事例
例えば、夫A、妻B、長男C、二男Dの4人家族がいた場合に、夫Aが亡くなったとします。
そして、妻Bが、相続開始後に夫Aの預貯金から、夫Aの葬儀費用や債務、遺産管理費用を支出した場合、その出金された財産については、遺産分割の対象となる財産に含まれるのでしょうか。
2 法律上の規定
相続開始後に出金がされた場合の原理、原則について、法律上は以下のような規定がおかれています。
(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)
第九百六条の二 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。
要約すると、①「相続人全員」が②「同意」した場合には、相続開始後に出金された財産も遺産分割の対象とすることが可能であり(同条1項)、この①「相続人全員」には、「処分をした者」を含めない(同条2項)と考えているということです。
これを「1 想定事例」に当てはめて考えてみると、葬儀費用や債務、遺産管理費用を支出した妻Bが同意しない場合であっても、長男Cと次男Dが同意をしている場合には、引き出した金銭も遺産分割の対象とすることができるという事になります。
3 裁判例上の調整
しかし、実際の裁判例では、妻Bのような「相続財産の処分を行った者」に同条2項の適用を否定し、同条1項の適用に関しては「相続財産の処分を行った者」の同意まで必要であるとした裁判例(東京高裁令和6年2月8日決定)があります。
その事案で重要な規範となったのは、被相続人と相続財産の処分を行った者との間で「(被相続人の)死亡後における相続債務の支払等の事務処理に関して委任契約又は準委任契約を締結しており、これに基づいて、被相続人の死後に預貯金を払い戻して同事務処理の費用に充てた場合」に該当するという点です。
このような場合に該当するときは、「相続財産の処分を行った者」の同意まで必要であると判断しました。
そして、このような場合に該当する要素として、
① 被相続人の生前に、被相続人と相続財産の処分を行った者との間で、被相続人の所有する財産管理等に関する今後の全ての意思決定を処分を行ったものに一人する旨の誓約書に署名押印がなされていること
② 相続財産の処分を行った者が被相続人の生前から現に財産の管理を行ってきたことをうかがわせる事情があること
を指摘しています。
4 結論
以上のような経緯から、相続開始後の出金を遺産分割の対象とできるか否かについては、被相続人と相続財産の処分を行った者との間でどのような契約関係ややりとりがあったのかという点が重要になってくるといえるでしょう。
それでは、また次回お会いしましょう。
相続開始後に遺産から生じた賃料や配当金の相続と遺産分割について
皆様、お久しぶりです。
名古屋では梅雨がまだまだ続きそうですが、体調はいかがでしょうか。
今回は、「遺産から生じた賃料や配当金の相続と遺産分割について」解説していきたいと思います。
1 遺産分割の対象になるか
遺産分割の対象となる「遺産」は、原則として①被相続人の死亡時に現に存在していた財産でること及び、②遺産分割時に現に現存している財産であることが必要です。
この原則からすると、相続開始後の「賃料」や「配当金」は、①に該当しないことから、「遺産」には該当せず、遺産分割の対象とならないと考えられています。
2 権利の帰属について
では、「賃料」や「配当金」が遺産に該当しないとして、その帰属はどのように決められるのでしょうか?
この問いに対する考え方は、大きく分けて以下の2通りの考え方があります。
① 遺産分割の遡及効(相続が開始した時に遡って権利の帰属があったこととする効力)により、「賃料」や「配当金」の発生元となる財産を取得した人が、「賃料」や「配当金」を取得する。
② 「賃料」や「配当金」は、遺産分割がまとまるまでは、相続人全員が法定相続分にしたがって、分割して取得する。
この2通りの考え方の内、最高裁判所は②が妥当であるとの判断を行いました(最判
平成17年9月8日)。
3 最判平成17年9月8日の判断
遺産から生じた賃料債権の帰属について争われた裁判で、最高裁は「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」と判断しました。
この判断の要点としては、
① 「賃料」は遺産に該当しない。
② 相続開始後に生じた「賃料」は相続人全員が法定相続分に応じて確定的に取得する。
という2点です。
このような判断がされたのは、
① 遺産分割は遡及効を有しているものの、遺産分割前に財産を譲り受けた第三者の権利を侵害してはならないというように、一定限度第三者の信頼を保護する運用になっていることから、遡及効を貫徹するのは妥当でない。
② 相続開始後、遺産分割前の遺産については、共有の状態であるから、その財産から生じた賃料は、共有者全員が取得するのが妥当である。
と判断されているからです。
4 このように、相続開始後に遺産から生じた賃料や配当金については、相続人全員で当然に分割されることになります。
では、また次回お会いしましょう。
国庫帰属制度の不承認事由について
皆様、お久しぶりです。弁護士の林です。
今回は、相続土地国庫帰属制度の「不承認事由」について解説していきたいと思います。
1 不承認事由一覧
⑴ 一定の勾配・高さの崖があって、かつ、管理に過分な費用・労力がかかる土地
⑵ 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
⑶ 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
⑷ 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
⑸ その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
以下、解説していきます。
2 一定の勾配・高さの崖があって、かつ、管理に過分な費用・労力がかかる土地
勾配30度以上+高さ5メートル以上に該当する崖がある土地であって、通常の管理に過分な費用・労力がかかる土地は国庫帰属することができません。
この時の「通常の管理に過分な費用・労力がかかる」か否かの判断は、住民の生命等に被害を及ぼしたり、隣地に土砂が流れ込むことによって被害を及ぼす可能性があり、擁壁工事等を実施する必要があると客観的に認められるような場合などが挙げられています。
3 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
①工作物、車両又は樹木その他の有体物が存する土地であって、かつ、②その有体物が土地の通常の管理又は処分を阻害する場合には国庫帰属をすることができません。
具体的な例でいくと、果樹園の樹木や倒木、定期的な伐採が必要とされる樹木が挙げられます。
4 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
以下の土地に該当する場合には、申請が認められません。
① 他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)
② 池沼・河川・水路・海を通らなければ公道に出ることができない土地、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差がある土地
③ 所有者以外の第三者によって占有されている等、使用収益が阻害されている土地
5 その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
① 災害の危険により、土地周辺の人や財産に被害を生じさせるおそれを防止するため、措置が必要な土地
② 土地に生息する動物により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地
③ 適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が必要な森林
④ 国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
⑤ 国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地
以上です。
次回からは、また新しいテーマについて解説しようと思いますので引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
国庫帰属制度の添付書類について
皆様、お久しぶりです。
弁護士法人心の林です。
前回に引き続き国庫帰属制度についての解説を行っていきます。
今回のテーマは「添付書類について」です。
1 提出書類
国庫帰属制度の申請を行う場合には、管轄法務局に対して書類を提出していく必要があります。
提出書類は以下のとおりです。
① 承認申請書
② 承認申請書に記名押印した人の印鑑証明書
③(対象の土地の名義変更をしていないとき)承認申請者が所有者または共有者であ
ることを示す書類
④ 対象の土地の位置及び範囲を明らかにする図面
⑤ 対象の土地の形状を明らかにする写真
⑥ 対象の土地と隣接する土地の境界点を明らかにする写真
⑦ 申請が承認された時に所有権移転登記がされることを承諾したことを証する書面
2 解説
⑴ 承認申請書
ア 必要事項
承認申請書には、以下の事項を記入し、申請者または法定代理人が記名押印する必要があるとされています。
① 承認申請者の名前
② 承認申請に関わる土地の所在、地番、地目及び地積
③ 承認申請に係る土地の「表題部所有者」または「所有権の登記名義人」の氏名
及び住所
イ 調査方法と根拠資料
上記の情報を記載する場合には、対象不動産の管轄法務局に行き、「登記簿謄本」を取得することで正確な情報を得ることができます。
登記簿謄本の取り方については、法務局のこちらのホームページが参考になります。
登記簿謄本の取得の際には、窓口に行く以外にも、郵送やオンライン請求が可能ですので試してみるのも良いかもしれません。
⑵ 承認申請書に記名押印した人の印鑑証明書
承認申請者の印鑑証明書の提出が必要とされているのは、本当に承認申請者が「国庫帰属制度」を利用したいという意思を持っているかを判断するためです。
⑶ (対象の土地の名義変更をしていないとき)承認申請者が所有者または共有者であ
ることを示す書類
具体的には、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」や、「遺産分割協議書」が該当します(戸籍謄本はお近くの市役所で取得できるようになりましたので一度確認してみるのも良いかもしれません(戸籍謄本の広域交付制度)。)。
例えば、お亡くなりになった父親の土地について相続開始後すぐに国庫帰属したいと考えた場合について見ていきましょう。
この時、お父様がお亡くなりになったばかりなので、登記簿に記載されている所有者は「お父様」です。
お父様は既に亡くなっていますので実質的な所有者は相続人となりますが、登記簿の名義変更を行うには「相続登記」を行う必要があり、登録免許税や専門家報酬がかかってしまいます。
そのため、実質的な所有者や共有者がが明らかな時には「相続登記」をしなくて良いことになっているのです。
⑷ 対象の土地の位置及び範囲を明らかにする図面
具体的には、登記所に備え付けられている地図の写し(14条地図や公図)や国土地理院が公開している地理院地図などに申請者が認識している土地の位置及び範囲を示したものが必要となります。
⑸ 対象の土地の形状を明らかにする写真
具体的には、対象地の全体を撮影した写真で、⑷の位置関係と範囲が分かるように撮影された写真である必要があります。
これは、国庫帰属制度の対象地が現在どのような状態なのかを確認するために必要とされている写真です。
⑹ 対象の土地と隣接する土地の境界点を明らかにする写真
具体的には、境界標やブロック塀、道路のへりなどの簡単に分かる目印となるものであればよいとされています。
上記⑷の図面に示された範囲等が分からない場合には、適正な写真とは認められないので注意が必要です。
⑺ 申請が承認された時に所有権移転登記がされることを承諾したことを証する書面
国庫帰属を承認する判断がされた場合には、所有権が国に移ることになりますので、その登記を行うことを承諾する書面の提出が必要になります。
このように、国庫帰属制度の申請に当たっては、必要となる書類が多いですので、難しい場合には、専門家に相談されるのが良いでしょう。
それでは、また次回お会いしましょう。
次回は、「国庫帰属制度の不承認事由」について解説していく予定です。


