配偶者居住権を審判で付与することについて
皆さま、お久しぶりです。
今回は、配偶者居住権を遺産分割審判の手続きで認めていく場合の問題点について、お話しします。
1 配偶者居住権について
配偶者居住権は令和2年の民法改正の施行に合わせて新規に創設された権利です。
その内容は、概ね「夫婦の一方が亡くなった場合に,残された配偶者が, 亡くなった人が所有していた建物に,亡くなるまで又は一定の期間,無償で 居住することができる権利です。」と説明されています。
2 付与するための要件について
配偶者居住権を付与するためには、以下の3要件を満たしている必要があります。
⑴ 残された配偶者が,亡くなった人の法律上の配偶者であること
⑵ 配偶者が,亡くなった人が所有していた建物に,亡くなったときに居住していたこと
⑶ ①遺産分割,②遺贈,③死因贈与,④家庭裁判所の審判のいずれかにより配偶者居住権を取得 したこと
この内、今回問題となるのは⑶の④家庭裁判所の審判によって配偶者居住権が付与された場合についてです。
すなわち、⑴、⑵、⑶の②及び③については、客観的な状況から明らかであればそれでよく、⑶の①については、相続人全員が合意しているためそもそも争いになりませんが、⑶の④だけは相続人が反対しているにも関わらず、配偶者居住権の設定ができてしまうのです。
3 問題性について
配偶者居住権を設定する場合は、被相続人の遺産である自宅について、①土地の所有権、②建物の所有権、③配偶者居住権に基づく敷地利用権、④配偶者居住権(建物の利用権)の4つに分割します。
この時、①、②は配偶者以外の相続人が取得し、③と④は配偶者が取得することになります。
例えば、被相続人の相続人として、配偶者のA、子のBがおり、Aは居住を続けたい、Bは売却してお金だけ欲しいという場合に、配偶者居住権を認めた場合には、①、②はBが取得し、③と④はAが取得することになります。
この時、Bが不動産の取得を希望していなかった場合であっても、強制的にBに不動産の取得を強制できることになるのです。
昨今では、不動産が単なる資産ではなく、売却できない場合に負債に近い状態になるという意味で「負」動産となる可能性があることが広く認知されてきました。
被相続人の住居が売却できる不動産であれば問題はないのでしょうが、売却できない場合や著しく廉価になる場合にまで、これを強制される可能性がある点は意識する必要があります。
4 審判における考慮要素
では、強制的に裁判所が配偶者居住権を強制的に取得させることができることを前提として、その際に考慮されるべき要素はどのような点にあるのでしょうか。
この点、条文は、
第1029条【審判による配偶者居住権の取得】
遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
一 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
二 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。
と定めています。
すなわち、原則は全相続人の間で合意して欲しいけど、実際に不動産の所有権を相続する相続人の不利益と配偶者の居住権を考慮して、居住権が特に必要と認める場合には配偶者居住権の取得を認める審判を出すとしているのです。
5 当職の考察
この場合の考慮要素について、この条文以上の考慮要素は示されていません。
ただ、配偶者居住権は、不動産を取得する相続人については、配偶者が死ぬまで不動産を換価できないという不利益を与える点や、原則として相続人全員の同意が要求されている点(あくまで審判による付与は補充的な運用となる点)を考慮して、①代償金の支払が不可能又は著しく困難であること、②残置物の処分可能性は考慮要素として追加すべきであると考えております。
すなわち、①は、配偶者が不動産の取得のために必要な代償金を支払うことができるにもかかわらず、あえて配偶者居住権の取得を認めるべきではないという要素です。そもそも、配偶者居住権は配偶者にお金がないことから、居住している家を立ち退かなければならないという事態を想定して設定された権利なので、代償金を支払えるケースにまで適用すべきではありません。
また、②は、配偶者の相続人が、不動産を取得する子でない場合には、そもそも配偶者居住権の取得を認めるべきでないという点です。基本的には、配偶者が後妻で、子と血縁関係がないケースが典型例となります。
この場合、配偶者の死亡後の財産が、配偶者以外の者に帰属するため、不動産の内部の動産を処分できなくなるのです。
このような点から①、②は必ず考慮する要素ではないかと思慮しています。
所在地
〒530-0001大阪府大阪市北区
梅田1-1-3
大阪駅前第3ビル 30F
0120-41-2403


